インタビュー企画【1】滋慶教育科学研究所 職業人教育研究センター センター長 志田秀史氏「理論と実務をつなげる橋渡しを」

今後の活動の展望と願い

赤尾:国家学位資格枠組みのプロジェクトで吉本先生や芦沢先生と出会われたというお話がありましたが、現在のトヨタ財団での活動に繋がっている部分はありますか。

志田:大いにあります。やはり、人との繋がりが大事なのだと感じます。九州大学の国家学位資格プロジェクトに吉本教授が芦沢教授を呼んで、その後、今度は芦沢教授が吉本教授を呼んだのですね。お二人とも熱心に活動されている方なので、同志のような存在なのだと思います。私は現場を良く知っているということで、吉本教授の補佐的な側面もあり、現場にヒアリングや調査の必要があると連絡をいただくので、やはり人の繋がりかなあと思います。

湊:今回のプロジェクトに参加する際の、大きな期待や願いはどのようなものでしょうか。

志田:東京規約(詳しくは研究会の報告書をご覧ください:「行政取極としての東京規約」を考える)という言葉は、専門学校の経営者や教員も知っています。「東京規約が日本でシステム化したら、専門学校にどのような影響がでますか」という質問がきたことがあります。芦沢教授の名前を知っている専門学校の教員がいて、プロジェクトに参加させてもらったと言うと驚いていていました。ですから、どういう仕組みなのか、そして専門学校にどんな影響があるのか現場でも関心がある。これを機に、専門学校で芦沢教授の名前が広がっていると思います。

赤尾:現在の活動をどのように発展させて、どのようなことを今後実現させていきたいかビジョンをお聞きできればと思います。

志田:学位・資格枠組みについては吉本教授と他の2人の方と地道に研究は続けており、今複数の学会で発表して広げていっているので、それを継続したいと思っています。こうした策定の面は、東アジアでは韓国、またオーストラリアが非常に進んでいるということなので、継続して交流し、共同研究としながら地道に広げられれば、まずそこからだなと思っています。

赤尾:取り組まれている研究を通して伝えたいことやメッセージがあればお願いします。

志田:留学生政策や移民政策に取り組む研究者仲間が今より増えることを願っています。そういう方とは積極的にコミュニケーション取るようにしております。先日も移民政策を開始したいという人が来たので、積極的に会ったりして。日々の活動は地道しかないかなと思いますね。

インタビュー後記

実務家出身の研究者として、理論と実践の橋渡しを最前線で担う志田先生からは、人とのつながりを鍵に研究に拡がりを生んでいきたいという思いが伝わってきました。戦略的な外国人受け入れに向けて、現場の丁寧な調査やシステムの国際比較研究等が推進されることを期待しています。(湊洵菜)

志田先生へのインタビューを通して、日本と海外の学びに関する違いを発見できた。日本には専門学校や大学で学んだ留学生の追跡調査がまだ不十分であることが課題だと思った。ヨーロッパのように追跡調査がもっと行えれば、卒業生が学んだ知識をきちんと活かせているのか、納得のいく就労ができているのかを知ることができる。反対に、何か課題が見つけられるかもしれない。そういった部分で海外からの学びを日本の今後に反映できればいいと思った。

一方で、日本は介護の分野以外にも食や歯科技工の職で新たに期待ができる留学生への学びを提供できる機会を持っていて、それはやはり日本が優れた知識や技術を持っているからだという日本の強みも理解できた。志田先生がインタビューの間何度もおっしゃっていた、「キーパーソン」「熱意」「仕組み」この3つ全てが欠けることなく、日本の新たな発展に繋げていけるよう組織の方々が同じ気持ちでいるのだろうと思った。

残り少ない大学生活で貴重な経験ができた。ありがとうございました。(赤尾菜々実)

参考資料

介護マトリクス

吉本圭一・伊藤一統・江藤智佐子・志田秀史(2021)「職業能力と学修成果に関する研究-保育・介護・看護における社会人調査より-」日本職業教育学会第2回大会、発表資料より抜粋

志田秀史・老田義人・勝原修吾(2021)「専門学校調理師及び製菓衛生師養成課程における外国人留学生に対する学業定着方略に関する研究」実践政策学.Vol.7(1):129-138.

農林水産省(2019)「日本の食文化海外普及人材育成事業について(日本料理海外普及人材育成事業の一部改正)」

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gaisyoku/ikusei/

平成29年度文部科学省委託事業 専修学校による地域産業中核的人材養成事業成果報告書vol.17 国家学位資格枠組の世界的展開と日本における導入可能性」 国立大学九州大学(事業責任者 吉本圭一)

吉本2012「卒業生のキャリアと学校調査に関する調査プロジェクト」、他

その他以下参照のこと

「九州大学第三段階教育研究センター・研究成果」

https://rteq.jp/rteq/research_results.html