プロジェクト

背景とメンバーの役割

今日の外国人材受け入れは、職業訓練をいわば口実として段階的にすすめられている。この対処療法的な取り組みは当事者(外国人材)にとってはわかりにくい制度であり、労働市場におけるミスマッチ、人権侵害と文化摩擦を引き起こしている。本企画は、日本において中長期で求められる人材と期待される能力資格基準を明確化し、日本の労働市場と外国人材の間のミスマッチを解消し、外国人材のキャリア形成を支援することを目標としてメンバーを構成している。

1.求められる人材・期待される能力資格基準の明確化(NQF研究+FCE実践)

吉本圭一が創設した第三段階教育研究センター(九州大学)は、職業教育や生涯学習の社会的認知と国家資格枠組み(NQF)の研究をすすめ、日本版NQFの導入を提唱してきた。代表者(芦沢)を中心とするFCE研究は、留学生・外国人材の資格・学修歴の評価を課題としてきた。カナダ、豪州などがNQFとFCEを活用して有用な外国人材を獲得していることを参考とし、本企画では芦沢、吉本、根橋らを中心に外国人材受け入れシステムの国際比較研究を推進する。

2.長期的・戦略的な政策提言(国民的な合意形成と国会議員への働きかけ)

本企画は、日本国際交流センターが主催する「外国人材受け入れに関する円卓会議」関係者(毛受、宍戸、佐藤、SHRESTHA)の参加を得ることで、長期的・戦略的な政策提言をおこなうことができる。とくに宍戸は、JICAにおいて「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム」構築の責任者であり、外国人材受け入れの抜本的な環境整備を目指している。一方、職業教育の質向上、生涯学習の促進、グローバルなキャリア形成という面では、本研究の成果は外国人材だけでなく、日本人就労者にも恩恵をもたらす。政策提言における豊富な実績をもつ鈴木を中心に国会議員への働きかけをおこなうとともに、国民的な合意形成を目指す。

3.外国人材受け入れにおける学修歴・資格のデジタル認証

現在、代表者および中崎を中心に、科研費プロジェクトの取り組みの一環として、大学における証明書類の電子化の実証実験をすすめている。この実証実験は、フローニンゲン宣言ネットワーク(GDN: Groningen Declaration Network)により国際的標準として認定されたシステムを導入している。証明書類の受領者である採用企業や進学先大学院などは、データの発行元、送付者の情報を正確に把握することが可能で、改ざんが行われていないことも確認することができる。個人の学修歴が総合的に電子認証されるようになることは、外国人だけでなく、日本人全体にとっても大きなメリットをもたらす。最終年度に運用開始予定の「外国人材学修歴オンライン・システム」は、インターンなど非伝統的な学修歴、部分的な資格(マイクロ・クレデンシャル)なども対象として、外国人材の資格認証に有用なシステムとなるように開発をすすめる。

4.来日後の外国人材のキャリア形成

外国人材の受け入れを円滑にすすめるためには、来日後の就労、キャリア形成、生活面での満足度を高めていく必要がある。本企画では、SHRESTHAと渡辺を中心に、当事者ニーズに基づいてキャリア形成にかかわる課題の分析をおこなう。また、根橋、太田、白石など、留学生・外国人のキャリア形成に関して研究と実践面で実績のあるメンバーを中心に、外国人材の資格認証とキャリア形成に役立つシステム開発を実現する。また、杉田を中心に在留資格の現状と将来に向けた課題を分析する。外国人材が主体的に必要な知識や技能を身につけ、より高度な社会経済的ステータスを実現するため、鈴木、杉田、松本を中心に課題分析と政策提言をおこなう。