現状分析と将来像

本プロジェクトが目指すもの

日本の外国人材受け入れは、産業界からの要請に基づき、南米日系人の受け入れ、技能実習生制度、EPA、特定技能などの在留資格などを創設してきたが、一貫性と将来展望に欠けた政策とも指摘されてきた。長期的に日本社会が必要とする高度人材や熟練労働者を確保していくための戦略的な政策とそれを支える人材評価システムが求められている。

移民政策において必要な労働力の確保に成功している国では、外国からの学歴・資格を適正かつ公平に評価するFCEのシステムが発達している。例えば、カナダにおいては、”A Pan-Canadian Framework for the Assessment and Recognition of Foreign Qualifications” (2009)という判断基準が設定され、必要とされる人材や労働人口を考慮したうえで、FCEの専門家によってEducational Credential Assessment (ECA) が発行されるシステムになっている。豪州でも、Australian Qualification Framework(AQF)という資格枠組みを運用して、業種横断型で資格基準が設定されており、国家が戦略的に必要としている人材に優先的に就労可能なビザが発給されるような仕組みになっている。このようなシステムを日本で構築していくためには、次のような国レベルの制度設計とインフラ整備が必要となってくる。

1.人材の国際的な流動化が進む中で、他国で取得した資格や学位などを認証し、国境を越えて人材が移動しやすい体制を確保することは、全世界的な課題となっている。欧州、北米、豪州などではFCEが実践され、優秀な留学生、有能または有用な人材を迎えることに成功してきた。アジアでも、2018年2月に発効した東京規約が日本を含む9カ国による参加(2020年10月時点)を得て、ユネスコを中心に運用されている。今後、日本においても、FCEが適正に運用されるように制度設計とモニタリングが必要である。

2.欧州、豪州では、国レベルの資格枠組み(National Qualifications Framework)を設定し、業種横断型の資格基準が明示されている。業種を超えた職業・資格能力認定を外国人に対して適用するために必要なインフラである。欧州では、FCEの適切な運用のために、Tuning Projectなどの成果としての学習成果分析、ユネスコによる国際教育標準分類(ISCED: International Standard Classification of Education)ISCEDに対応した教育訓練によるあらゆる学位・資格を分類するNQFなどの資格認証ツールを活用している。NQFは、職務歴や学修歴を適切に評価し、生涯学習、「質の高い職業教育」の推進のために不可欠のシステムであり(吉本2006)、日本でもその必要性が提唱されてきた。

3.FCEが定着している、欧州、北米、豪州などでは、学修歴関連の証明書類のデジタル化が急激に進展している。証明書類を電子化し、学修歴データを携帯化する動きは欧州で始まった。データ管理やシステム開発の面で国際的な協調をすすめるため、2012年にオランダのフローニンゲンに専門家が集まり、フローニンゲン宣言ネットワーク(Groningen Declaration Network: GDN)が発足した。GDNは、「『電子学生データの携帯性』を実現し、それにより、世界中の市民の学修・就転職の移動性ニーズに資する」ことを目的としている。2020年7月現在で30カ国・110機関が加盟し、学修歴証明書デジタル化の国際協調が促進されている。一方、国際的に偽造卒業証明書党の問題が顕在化しており、外国人材の適切な採用に困難を来している。この観点から、証明書の電子化をすすめて真偽性の確認を確保していくことは日本における外国人材の受け入れにとって、必須の課題となっている。

<参考>吉本圭一(2006)「生涯学習の推進にかかる教育・職業資格の国家的体系の役割」(国立教育政策研究所)