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NQF、FCE、学修歴証明の電子化は、外国人材の受け入れやキャリア支援において不可欠な要素となっている。以下にその概要を説明する。

①FCEとは?

外国で発行された、学業・卒業証書、または学位・資格について、その所有する者を受け入れようとする国において、当該国の教育制度や資格制度の下でどの段階に対応するか、学業成績のどの評定に対応するか、どの資格と同等であるか、証明書が真正なものであるかなどについて、審査・認証すること。審査・認証の目的は、受入国での進学を目的とした学術的資格の審査をはじめ、同種の職業に従事するための専門的資格の審査、あるいは移住を目的とするものなど、多岐にわたる。審査・認証の仕組みや考え方、審査・認証の実施権限をもつ者(高等教育機関や第三者の資格審査機関など)も国の事情や特徴によって異なる。

出典:独立行政法人大学改革支援・学位授与機構.高等教育に関する質保証関係用語集(第4版). 「外国資格・学習歴の評価・認証(FCE/FCR)」. https://www.niad.ac.jp/consolidation/international/publish/package.html

②NQFとは?

学位・資格について、学習量、学習成果、能力等を指標として学習の達成水準を段階的に分類する仕組み。学習者の教育の水準を示し、学位・資格の透明性を確保することをねらいとしている。教育の質の改善・向上や、労働市場等での学位・資格の認証を意図して策定されている。資格枠組の具体例として、主に欧州各国、豪州、東南アジア各国において、国単位の枠組み(全国資格枠組:National Qualifications Framework, NQF)が策定されている。また、「欧州資格枠組」など、国単位で策定された枠組みを地域間で比較可能にする枠組みも構築されている。

出典:独立行政法人大学改革支援・学位授与機構.高等教育に関する質保証関係用語集(第4版).「資格枠組」. https://www.niad.ac.jp/consolidation/international/publish/package.html

③NQFとFCEの連携の可能性

欧州、北米、豪州では外国で教育や職業訓練を受けた者を受け入れるため、FCEのシステムが発達してきたが、FCEの判断基準の重要な要素の一つにNQFがある。


図1は、各国のNQFをどのように相互評価しているか、を表している。スコットランドの技能レベル7と8は、アイルランドではレベル6に相当していることを示している。
日本でも、生涯学習や職業教育の推進の観点からNQFの意義や必要性は認識されており、内閣府を中心に「キャリア段位」の試行や検討をすすめてきたが、各省庁の壁を越えた共通の資格枠組みを構築するには至っていない。

カナダや豪州では、NQFの概念をつかって自国に不足している人材の資格や技能水準を明確にし、FCEの評価基準により国として必要な人材を優先的に移民として受け入れている。

④学修歴など資格認証のデジタル化

FCEの実務においては、電子化は公平性、迅速性、正確性を確保するうえで不可欠の要素である。特に、外国の資格関係書類が「偽造でないか?」といった真正性の審査は重要な要素である。証明書類の電子化がすすむと、発行元の確認と改ざん記録の有無も確認できるようになるため、証明書類における真正性の確認は不要となる。また、電子化がすすむと、これまでは正規の履歴としてはみとめられなかったような非伝統的な学修歴、部分的な修学などが容易に認められるようになる。近い将来、MOOCsなどのオンライン学習を含め、多様なマイクロ・クレデンシャルが発行され、それらを電子的に認証する形態として、デジタル・バッジなどが浸透していくことが想定される。生涯学習の推進のためにも資格認証オンライン化は極めて有効である。

<参考>代表者を中心とする科研プロジェクトにより、2020年10月より、学修歴証明書のオンライン化の実証実験が開始された(写真は日本経済新聞10月5日掲載記事とシステム運用画像)。